【岩貞るみこの人道車医】「モンスター歩行者」増える日本の道路事情を考える | CAR CARE PLUS

【岩貞るみこの人道車医】「モンスター歩行者」増える日本の道路事情を考える

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オーストラリアの道路に見つけた「REFUGE ISLAND(避難島)」の標識。車両優先だが歩行者が横断することができる。歩行者側にも安全意識と緊張感がなければ歩行者事故はなくならない
  • オーストラリアの道路に見つけた「REFUGE ISLAND(避難島)」の標識。車両優先だが歩行者が横断することができる。歩行者側にも安全意識と緊張感がなければ歩行者事故はなくならない
  • バス停のそばにあるREFUGE ISLAND
  • すぐ先に見える、REFUGE ISLAND。ちなみに、この場所では、反対車線からきたときには、標識はなかった。
  • こちらは、日本でもみかける、横断歩道上に設けられた、避難島。住宅街や学校のそばにあり横断歩道自体がハンプになって、時速25kmに下げるよううながしている。この道自体は時速40km制限。
  • 横断する歩行者に、左右を注意するよう呼びかける「LOOK」の文字。
  • こちらはハンプ。横断歩道のないタイプは、歩行者がわたれないよう、柵がつけられている。
  • 同じくハンプ。
  • ラウンドアバウト。いたるところにある。
2018年になりました。新しい年を迎えるとやたらやる気になるのは小学生のときから変わっておらず、新たな気持ちで身を引き締めているのと同時に、そのモチベーションが一年間、続かないのもずっと変わらず成長なしで情けない限りですが、今年もご愛読のほど、よろしくお願いたします。

【道】日本で歩行者事故が多いのはなぜか

2018年の第一弾のテーマは「道」である。交通事故を減らすためにいくら自動車メーカーが開発にいそしんだところで、走らせる道が安全にできていなければ効果は発揮できないのは周知の事実。あの過酷なレースでドライバーの安全が保たれるのは、クルマだけでなくサーキットの安全対策が欠かせない。こうした姿勢を見れば、「道」づくりの大切さも自ずと知れたものである。

ところで、日本は歩行者事故の多い国だ。欧米をはじめとする先進各国と比べても断トツで多く、自動運転技術の世界会議でも「歩行者系は日本にまかせるからさー。うまくできたら世界に展開してくれない?(もちろん意訳)」という声が聞こえてくるほどだ。期待されているのか、日本。その割に、解決の目途はたっていないようにみえる。歩行者って動きがよめないからむずかしそうだなあ。スマホ使って位置特定といわれても、スマホ、朝晩のウォーキングや、ちょっとそこまで買い物に、なんてときは持ち歩かないしなあ(遠い目)。

私はこれまで、日本が諸外国に比べて歩行者事故が多いのは、歩行者が多いからだと思っていた。いや、その考えはいまだに変わっていない。北米や欧州は、ちょっと街中をはずれると、人は歩いていないからだ。歩いていたら誘拐されちゃうし。殺されることだってあるし? 平和な日本だからこそ、小学生ですら往復一時間以上かけてひとりで登下校できる。しかしそれはつまり、歩行者が歩行する距離も時間も長いということで、ゆえに交通事故に遭う機会も増えるわけだ。

でも、最近はもうひとつ理由があると感じている。それは、「歩行者のモンスター化」である。

日本の道交法は、クルマに厳しい。極端にいえば、クルマは歩行者に対して、絶対的に心を配って運転すべしとなっている。対自転車では、自転車が加害者になることもあるけれど、歩行者ではまずありえない。となると、「どんなふうに歩いていたって、ぶつかってくる車が悪いんだもーん」というモンスター歩行者を作っているということだ。もうちょっと、歩行者も自覚して道を使おうよ! たとえ子どもでも! なんてことを書くと、「あれ、イワサダ、子どもの味方なんじゃないの?」「子どもに安全を強いるのはクルマ側のエゴだ」と言われそうだけれど、でも、子どもだからこそ、子どものうちからちゃんと、「なにしてもいいわけじゃないんだよ」ってことは教えるべきだと思うのだ。

◆道路の真ん中に“避難島”

そんなこんなと考えながら、この年末年始はオーストラリアに行ってみた。すると、ラウンドアバウトにハンプ、歩車分離信号と、いま、日本で注目され、導入が進められている道路側の安全対策がいっっったるところで導入されており、この10年ほど日本でちぢこまりながらドメスティックな生活を送っていた私としては、改めて、ほほほおおおおう、と、うなりながら、リフレッシュ休暇を忘れて道路観察で歩き回ってしまった。

そんななか見つけて、これだ!と、手をたたいたのが(実際にはたたいていません、念のため)、「REFUGE ISLAND」である。レフュージ・アイランド。避難島。道の中央車線部分に設けられた、歩行者がいったん避難するためにとどまれる島である。前後にはパイプ状のガードレールがあり、クルマの衝突から守るようになっている。

いやいや、それってさ、日本にもあるんだけど? そう思うでしょ。違う違う。日本のそれは、横断歩道上にあり、一気に反対側の歩道までわたりきれない人のためにあるものだ。ところがオーストラリアのそれは、横断歩道がないところにあるのである。横断歩道がない? そう、ない。ぽつりと島だけあるのだ。

これがどこにあるかというと、私が見かけたのは、バス停のそばだった。そう、横断歩行者が発生する部分である。つまりここは、「バスに乗りたいでしょ。わたりたいでしょ。信号のある横断歩道までは、300メートルくらいあるよね。大変だよね。そんなことしていたら、バス、行っちゃうよね。だからここ、わたっていいよ。だけど、ここはクルマ優先だよ。だから、わたるときは、歩行者が十分に注意してね。んで、わたりきれなくなったときは、この島に避難するんだよ」というものなのである。

◆モンスター歩行者を増殖させないために

最終的にここで事故が起きたとき、歩行者とクルマ、どちらが悪いのかは、そのときの状況によるのだろうが、歩行者に注意をうながさせる姿勢は、交通社会に参加する全員に意識を高くもたせてるもので、まったくもって羨ましい。

日本の場合も、ずーっと果てしなく歩かないと横断歩道がない道では、適当な場所で横断してしまう例はあとをたたない。ショートカット横断なんて言葉もあるほど、歩行者のわたるポイントが、ぐだぐだになっている道もいたるところにある。だけど、こういう、「REFUGE ISLAND」のような車両優先の横断箇所を作って、わたってもいいところを明確にしてあげれば、歩行者の意識を刺激し、事態も少しは変わるのではないだろうかと思う。

だったら、横断歩道を作ろうよという話になるかもしれないけれど、そうじゃない。絶対的に歩行者が守られている横断歩道ではなく、緊張感をもって自分の安全を自分で考えながらわたれる場所、ということである。もちろん、欧米豪州でうまくいっているからといって、道の幅や歩行者の感覚、国民性などには違いがあり、すべてうまくいくとは限らない。でも、モンスター歩行者をこれ以上、増殖させない意味でも、検討してみる価値はあると思うんだけどね。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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