最近のクルマにまつわるトレンドと言えば、コンパクトカーとSUVのふたつがキーワード。日々の実用性、経済性を考えれば、昨今の進化したコンパクトカーはまさに絶好の選択だし、クルマを通じてアクティブ感を演出するとか、生活を楽しいものにするとなると、にわかにSUVの存在が浮かび上がってくるのだ。しかも最近では、このふたつのトレンドがじわり融合してきてもいる。ズバリ、SUVテイストを巧みに取り入れたコンパクトカーが続々デビューしているのである。SUVは、まず見た目からして気分を昂揚させる。しかも走破性だって、最低地上高に余裕がもたされていたり大径タイヤを履いてたりで、結構侮れない。身の丈に合った買い物をしたいけれど、欲しい要素は譲れない。そんな今の世間のニーズに、SUVテイストのコンパクトカーはぴたりと合致している。日本で、世界でムーヴメントが盛り上がっているのも当然なのである。◆走りも変わった…トヨタ アクア クロスオーバー『アクア クロスオーバー』は、専用のバンパーにスキッドプレート、専用16インチホイールにフェンダーアーチモールなどの装着によって、外観からしてまさにその名の通り、アクアの個性にSUVテイストを見事に融合させている。ノーマル比30mmプラスの最低地上高も、雰囲気を盛り上げている。興味深いのは、その走りだ。最低地上高を嵩上げしたことで、キビキビとしたアクアの走りに、ゆったりとした乗り心地がプラスされている。内装の仕立ても上質さを増していて、家族や仲間との長距離ドライブにもいいかも…と思わせる辺りは、まさにSUVテイスト。見た目だけじゃなく、乗っても魅力的な1台に仕上がっているのだ。◆アクティブ感あふれる…日産 ノート X シーギア都会にもアウトドアシーンにも映える『ノート』として企画された『ノート シーギア』の外観は、かなり個性的だ。フロント、サイド、リアの下回りに装着されたスタイリングガードにルーフモール、そしてホイールアーチガーニッシュなどでSUVらしいタフな雰囲気を演出する一方、フォグランプフィニッシャーなどへの鮮烈な差し色でカジュアルさもプラス。どこにでも気軽に連れ出したくなるアクティブ感がアピールされている。しかもe-POWER仕様には、サスペンションやボディ、コンピューターなどに手を入れたツーリングパッケージも設定。普通のクルマじゃ飽き足らないという人に、走りの面でもプラスアルファを提供しているのである。◆トレンドの象徴…シトロエンC3SUVテイストのコンパクトカーというトレンドは世界的なもの。新型シトロエン『C3』は、まさにそれを象徴する存在だ。何しろそのコンパクトな車体は、ボディ下側からフェンダーアーチまでぐるり一周、樹脂パーツでカバーされ、大径タイヤとの組み合わせにより、一見ポップなのに甘過ぎない絶妙なデザインを形作る。軽微な接触からボディを守る特徴的なエアバンプも、タフに遊べるクルマという雰囲気を演出する効果大だ。見た目だけじゃない。搭載する1.2リットルターボエンジンはトルクフルで、力強く走ってくれる。ラゲッジスペースも大きく、まさにコンパクトでありながらSUV的なアクティブな使い方に、しっかり応えてくれるのだ。島下泰久│モータージャーナリスト。クルマの基本である走りの楽しさから、それを取り巻く諸々の社会事象、さらには先進環境・安全技術まで、クルマのある生活を善きものにするすべてを守備範 囲に、専門誌から一般誌、各種ウェブサイトなどに執筆。著書に『極楽ガソリンダイエット』(二玄社刊)、徳大寺有恒氏との共著『2015年版間違いだらけのクルマ選び』(草思社刊)など。