キズ・ヘコミ修理に出すほどでもないんだけど、エクボを見つけてしまったら、とても気にはなる。そんな愛車のちょっとしたヘコミを、みなさんはどうしていますか?「見て見ぬふり」なんていう人も多いのではないでしょうか。
そんな時のために覚えておいて欲しいのが、『デントリペア』という修理方法です。もしかしたら、耳にしたことがある読者も多いかもしれません。今回は、いざという時にユーザーを助けてくれる、このデントリペアという技術に注目してみましょう。
◆欧米では一般的な修理方法
そもそも、デントリペアとは一体どんな修理なのでしょうか?
正式名称は『ペイントレス・デントリペア』といいます。読んで字の如く、鈑金塗装を行わず、特殊なツールを使い、凹み部分を裏から押し出すなどして直してしまうという技術です。
欧米では、ごく一般的な修理方法の一つとして30年以上前から市民権を得ています。1990年代になって日本でも初めて紹介され、主要な保険会社の承認も得られるようになってきました。最近では、専門業者はもちろんのこと、ディーラーや鈑金塗装工場などでも頻繁に行われるなど、定着しつつあります。
◆東京を襲った「雹(ひょう)害」の時も大活躍!
「鈑金塗装をするほどでもないんだけど…」という凹みに、うってつけと言われている技術なのですが、その理由は、「早い」「安い」「キレイ」という三拍子が揃っているからです。
具体的には、以下のようなメリットがあげられます。
『早い』…修理時間は最短20分。使用する工具が手持ちで運べるものばかりなので、クルマを持ち込むことなく、出張修理なども対応してもらるため、気軽に依頼ができます。
『安い』…シンプルな方法で凹みを直すため、様々な工程を経る鈑金塗装の半額~3分の1程度の修理代金で済みます。ものによっては、10分の1ほどで収まるケースも。
『キレイ』…オリジナル塗装のまま直るので、修復歴も残りません。査定の際に “戦々恐々”となる必要もなし。
確かに、これだけの利点があると、選択肢の一つに浮上してくるのは当然ですね。
ここ数年、「雹(ひょう)が降った」という報告をよく耳にするようになりました。2017年7月に東京都内各地を巨大な雹が襲い、大きなニュースとして取り上げられたのは 記憶に新しいかもしれません。たくさんのクルマが甚大な被害を被ったのですが、この修理の際にデントリペアが大活躍していたのは、あまり知られてはいないでしょう。こういった修理は、まさに得意分野と言えます。
◆裾野が拡大する注目の技術
大阪府堺市でデントリペアのテクニカルスクールを運営する、日本デントショップネットワークの藤井寛代表に話を聞くと、「一昔前までは、仕事の依頼はディーラーなど自動車業界からのものが多かったのですが、最近ではSNSなどが普及したこともあって、一般ユーザーからの問い合わせも増えてきました。知名度が向上しているのは手応えとして感じています」と、伸び盛りの現状を教えてくれました。
日本よりも技術が普及している海外では、例えばディテイリングショップのメニューに組み込まれていたり、デントリペア専門の技術者を何人も雇っているお店も珍しくないそうです。そして藤井氏もこの修理技術の魅力をこう語りました。
「早くて安くてキレイという3つの要素を、高いレベルで実現しているのがデントリペアです。クルマの価値を落とさず、修理跡も残らないので、より多くの人に知ってもらいたいです」
現在、日本には技術者が「多く見積もっても500人程度」というのが現状だそうです。しかし、近年では藤井氏が運営するスクールにも、問い合わせが増えているそうで、技術者になりたいというニーズも着々と増えているようです。中には、前職で学校の先生をやっていたという人も。こういう話を聞くと、ますます身近な修理方法となっていく、そんな予感がします。
◆「鈑金塗装」それとも「デントリペア」? しっかりと見極めましょう!
もちろん、どんな凹みでもデントリペアで直せるというわけではありません。ダメージを受けた場所や、塗装面の痛み具合などによっては、鈑金塗装が必要というケースも多いです。鈑金塗装とデントリペアの違いや特徴を理解して、修理方法を検討するのが有効かもしれません。
みなさんも修理の際に、「これってデントリペアで直りますか?」という質問を投げかけてみてはいかがでしょうか。 もしかしたら、想定よりもグッと早くて、安い修理ができるかもしれませんよ!