カーオーディオのサウンドクオリティの善し悪しに影響が多大な“音調整”について、そのノウハウをマルチに解説している当コーナー。現在は、ハイエンドシステムにおける「クロスオーバー調整」の勘どころをご紹介している。今回はその5回目をお届けする。さて、前回までの工程で、トゥイーターとミッドウーファーそれぞれの限界を見極めた。その上で次にはいよいよ、「クロスオーバー調整」の本丸に攻め込んでいこうと思う。いろいろなやり方があるが、今回はもっとも入門的な方法をご紹介していく。題して、「基本形から展開させていく作戦」である。基本形とは、付属のパッシブクロスオーバーネットワークと同じ状態のことを指す。まずは取説を見てパッシブの設定値を確認し、各項目にその数値を入力する。その状態を基礎として、そこよりもさらに良くなるポイントを探っていく、という方法を取りたいと思うのだ。入力がすんだなら、次には「位相」の確認作業を行おう。トゥイーター側、もしくはミッドウーファー側どちらかの「位相」を切り替えて、正相のときと逆相のときの音を聴き比べてみる。どちらかでは音が向かってくるような感じで聴こえ、どちらかでは音が散らばったような感じに聴こえたとしたら、音が向かってくる感じのほうに合わせよう。その状態がいわゆる、「位相が合っている状態」だと考えることができる。もしも、切り替えても聴こえ方が変わらなかったら、それは「位相がどっちつかずの状態」であると判断できる。その場合はどちらかのスロープを1段階変更してみる。そうして再び、正相、逆相の音を聴き比べる。切り替えたときの聴こえ方の変化が大きくなったらしめたものだ。音が向かってくる感じに聴こえるほうを選択しよう。「クロスオーバー調整」では、スロープを変更するごとに、常に「位相」が変化する。であるので、スロープを変更した都度、「位相」を必ず確認しよう。そして、他の項目を変更したときにも、念のため都度「位相」を確認してみるとベターだ。なぜならば、「位相」が合わずして「クロスオーバー調整」の成功はない、からだ。「クロスオーバー調整」によって整えるべき要素は他にもあるのだが、他が整ったとしても、「位相」が狂っていたら台無しなのだ。今週はここまでとさせていただく。次週はさらに深いところに踏み込んでいく。お楽しみに。