電装品の電源配線トラブルで、エンジンルームが燃えたという車両の写真が編集部に届いた。見ると、エンジンルーム内は広範囲にわたって焼けただれ、ボディはススで汚れている。この程度ですんだからよかったものの、あわや大惨事…、という状況である。カーオーディオにおいては、パワーアンプやプロセッサーを設置する際、“バッ直”という、バッテリーにダイレクトにアクセスする配線スタイルが取られることが多い。カーオーディオ以外の電装品においても、常に安定的な電源を確保する必要がある場合には、この方法が取られることが多々。しかし、扱いを誤ると、このような事故は簡単に起こり得るのだ…。■クルマでは、“ショート”が簡単に起こり得る…。ところで、なぜに簡単に車両火災が起こり得るのだろうか。最初に、そのメカニズムから解説していく。車両火災の原因となるのは、ズバリ、“ショート”だ。電源線のプラスとマイナスが直結すると、一気に大量の電流が流れることとなる。これが“ショート”だ。ひとたび“ショート”が起き瞬間的に大量の電流が流れると、あっさりとケーブルが燃え始める。そしてそれが車両火災を引き起こすのである。電源が単三乾電池であっても、“ショート”させるとかなり大きな電流が流れる(危険なので、実験しないように…)。クルマの場合はその威力は相当に強力だ。写真のようなことが簡単に発生しかねない。クルマで“ショート”が簡単に起こり得る理由は、マイナス側の電流がボディを流れているから、だ。クルマに装着される電装品は、プラス側の電源はケーブルで引き込むが、マイナス側はボディに落とされる(ボディアース)。そしてバッテリーの近くで、ボディからバッテリーのマイナス端子へと繋がれたケーブルを伝って、バッテリーへと電気が帰っていく。マイナス側は、ボディがケーブルの役目をしている、というわけだ。であるので、もしもプラス側の配線の被膜が破れてボディに接触するようなことがあると、プラスとマイナスが直結する“ショート”の状態に、簡単に陥ってしまうのだ。電源ケーブルがシートレールに挟まって断線でもしようものなら、すぐに“ショート”が引き起こされる。■対処をしていれば安全…、こう思ってしまうところに実は、危険が潜んでいる…。それを防ぐための方法がある。それは、「ヒューズ」や「ブレーカー」を設置する、という作戦だ。といいつつ、これは特別なことではなく、電装品を扱うプロフェッショナルならば、ごくごく普通に施していることだ。基本中の基本、なのである。もしも“ショート”が起こり瞬間的に大量の電気が流れたとしても、「ヒューズ」ならば自らが切れて通電をストップさせることができる。「ブレーカー」ならば回線をシャットダウンさせることが可能となる。なお、写真のクルマでは実は、「ブレーカー」が設置されていた。しかし…。メンテナンスがされておらず、経年変化でブレーカーが正しく作動しなかった、とのことだ。対処をしていれば安全…、こう思ってしまうところに実は、危険が潜んでいるのである。それを、この写真のクルマは教えてくれている。“ヒューズ”や“ブレーカー”を設置するのは当たり前で、しかし、当たり前のことを行っていても、詰めを誤るとそこがほころびどころとなってしまう、ということなのだ。もしも、後付けで何らかの電装品を付ける場合は、そのメンテナンスを、知識と経験のあるプロにしっかりとお願いすべきだ。クルマは過酷な条件の中、日々、仕事をこなしている。エンジンルームの中などは、真夏には相当な高温になるし、真冬は極寒の中にさらされる。雨水も浸入してくるし、ホコリや油汚れも付きやすい。しっかりと対処をしている、と思っていると、そこにスキが生まれる…、というわけなのだ。さて、まとめである。新たに電装品を取り付ける際には、知識と経験のあるプロにお願いし、“ヒューズ”や“ブレーカー”の装着等々、トラブル対策をしっかりと施してもらおう。そして、それらの定期的なメンテナンス依頼もお忘れなきように。トラブルは、一瞬のスキを突いてやってくる。しっかりと対処ができている、と思い込んでしまうところにこそ、スキは生まれやすい、という次第なのである。取り返しのつかないことが起こる前に、念には念を入れて、十分なケアを実践したい。キーワードは、“プロに依頼する”、である。電装品の設置&メンテは、ノウハウとスキルのある、頼れるプロフェッショナルに、お願いすべし。