【インタビュー】トヨタ コネクティッド革命宣言…専務役員 友山茂樹氏 | CAR CARE PLUS

【インタビュー】トヨタ コネクティッド革命宣言…専務役員 友山茂樹氏

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【インタビュー】トヨタ コネクティッド革命宣言…専務役員 友山茂樹氏
  • 【インタビュー】トヨタ コネクティッド革命宣言…専務役員 友山茂樹氏
  • モビリティサービス・プラットフォームの概念図
  • スマートキーボックス説明パネル
  • オンライン入庫のデモ
  • プレゼンテーションを行う友山専務役員
  • プレゼンテーション後の囲み取材に応じる友山専務役員
トヨタ自動車は去る11月1日、メディア関係者向けに「トヨタのConnected戦略」と題した説明会を開催した。語るのはトヨタ自動車 コネクティッドカンパニーPresident(プレジデント)の友山茂樹専務役員。

この説明会は言わば、きたる自動運転・カーシェアリング時代に向けて、トヨタ自身の自動車メーカーからモビリティサービス企業への変化すら踏まえた、この先5年10年のトヨタの戦略プレゼンテーションであった。

トヨタがこれまで進めてきたこと、発表してきたことを整理すると、その戦略が明確になった。2020年までに、日米ほぼすべての乗用車に通信機「DCM(データ・コミュニケーション・モジュール)」を標準搭載し、クルマをデータ端末化すること。その一方で、集まったデータを管理・分析するクラウド「トヨタスマートセンター」を整備すること。そしてそのデータ端末化されたクルマとクラウドに対して、外部の事業者・サービサーがアクセスし、新しい価値・サービスを創出するための様々なインターフェイス、API群である「モビリティサービス・プラットフォーム」を構築すること。

クルマと個人との関係が“所有”から“利用”へとシフトしようとするなか、トヨタのIoT戦略の舵取りを任された友山専務役員は何を語るのか。プレゼンテーションの直後に話を聞いた。

---:発表で触れたOTA(車両ソフトのオンラインアップデイト)についても、今後の展開をお聞かせください。

友山:まず、OTAをマルチメディアの領域から始めます。ナビのソフトを変えるなどです。将来的には車両制御ソフトもOTAで変えたいと思っていますが、セキュリティ面と各国法令をクリアしてからと考えています。法令とは、車の運転機能に関するソフトウェアを勝手に変えてもいいのかという点です。ですので時期については、(課題解決の進捗をふまえて)適切な時期を考えたいと思います。

---:機能の追加が予定されていると、自動車購入のタイミングを迷わずにすみそうです。また、ソフトウェアがよくなることで、車両の制御がより上手になる、などのメリットがあるといいですね。

友山:市場の車のデータを集め、それを設計にフィードバックして制御ソフトウェアを改善し、もう一度それを配信する、ということが安全に実現できれば、ユーザー、メーカー、ディーラーにとっても大きなメリットがあります。

ただなんども言うようですが、安全に実現できることが大前提です。車はお客様の命を預かる商品であり、ベストエフォートのスマートフォンのように気楽にアップデート、というわけにはいきません。


■モビリティサービス・プラットフォームとは

---:さて、今日の会見の注目は、モビリティサービスプラットフォームのビジョンが明らかになったことだと感じました。つまり、これまでUber(ウーバー)と提携、カーシェアサービスのGetaroundと提携、というニュースが散発的に出てきていましたが、それは、トヨタがUberと組んだ、ということではなく、オープンに提供されるトヨタのモビリティサービス・プラットフォームを利用する事業者がUberだった、という理解で正しいでしょうか。

友山:おっしゃるとおりですね。パイロットサービスの最初の事業者が、北米のUberとGetaroundであったということです。

---:今回日本でこのような説明会を行った意図として、日本の事業者も手を上げて欲しいということがあるのでしょうか。

友山:北米のサービス発表が先行したのは、ライドシェアもカーシェアも、北米でサービスが急成長しており、IoTで車の新しいサービスを展開する環境も北米が進んでいるからです。日本で説明会を実施したのは、いままでUberやKDDIとの連携など、単発的に発表してきましたが、それぞれどういう関係になっているのか、という問い合わせが増えてきたので、大枠の取り組みから説明する機会をつくりました。

(例えば)カーシェアについては、SKB(スマートキーボックス。スマートフォンアプリと連携してドアロックの開閉が可能な車載デバイス)という装置を使って、キーの貸し借りがスマートにできます。お金の決済もクールにできる。トヨタレンタリースをはじめ、国内他社が新しい車のサービスとしてぜひ使って欲しいですし、トヨタ、レクサスでも新しいサービス、新しい利用形態を積極的に開拓していきたいと思います。

---:例えば資本提携したUberの競合にあたるLyftや、グループ企業であるトヨタレンタリースの競合にあたる企業に対しても、モビリティサービス・プラットフォームはオープンと考えてよろしいでしょうか。

友山:はい、そういうことです。クルマがDCMによってIoT化することで、多くのモビリティサービスが生まれることを期待しています。



■ビッグデータがトヨタのビジネスを変革する

---:コネクテッドカーのビジネスモデルについてどう考えていますか?

友山:(通信端末やクラウドのコストを回収する方法として)まずはDCMを売ることやリースすることなどで回収する形、そしてモビリティサービス・プラットフォームを利用する事業体からプラットフォーム利用料を回収する形、4年目以降のお客様からの課金で回収する形、以上の3つを考えています。

いっぽう、トヨタにとってコネクティッドカーは投資効果もあると考えます。例えば、クレーム対応にはこれまで相応のコストがかかっていましたが、(DCMで収集したデータから)改善点を早期発見し、損失を少なくできると思われます。そのような投資効果もビジネスモデルと捉えています。

---:中国の広汽トヨタでは、DCMでメンテナンス情報を収集しディーラー入庫につなげる、という仕組みをすでに導入していますが、国内でも、このようなコネクティッドカーを活用したメーカーとディーラーとの連携が始まっていく、と考えていいのでしょうか。

友山:そう考えていただいて結構です。今日も、敢えてディーラーの(故障車両のオンライン入庫の)デモをお見せいたしましたが、実際に名古屋トヨペットなどで準備が進んでいます。

その意味でも、いまトヨタの国内営業部門では、J-ReBORN計画という取り組み(今後10年にわたって国内新車販売台数150万台を確保する計画)があるのですが、その中でコネクティッド(による営業支援)は非常に重要な要素になっています。

---:そのJ-ReBORN計画のキーワードのひとつとして、あらゆるデジタルマーケティングやデジタルサービスのIDを統合してゆくOne ID TOYOTAがあります。コネクティッドカーはどのような役割を担うのでしょうか。
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友山:コネクティッドカーから集まるビッグデータは、One ID TOYOTAの付帯情報として非常に重要な要素と考えています。我々はカスタマージャーニーと呼んでいますが、お客様がサイトを見て、車に興味を持って、車を買ってカーライフを楽しみ、そしていつかは手放して、車を代替していく。車は変わっていきますが、お客様とは一本の線で繋がっている。そのようなカスタマージャーニーの各場面において、One IDは、その時々で適切な提案をするための仕組みと考えています。

そしてまた新しい車を選ぶとき、その人にあった車の提案ができるような仕組みです。

---:これまでは、ディーラーとメーカーがそれぞれ頑張っていたところを、One IDによって、顧客情報をシェアし、両者が連携・協調して取り組んでいくことになりますね。

コネクティッドカーが繋ぐ世界は、外に対してはモビリティサービス・プラットフォームをベースに新しいモビリティサービスと。内に対してはOne ID TOYOTAによる濃密な顧客サービスと関係性。内外とも、自動車ビジネスに対して大きく舵をきった印象です。本日はありがとうございました。
《三浦和也》

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