富士キメラ総研は、中国の主要車載電装部品市場と自動車メーカーや情報通信機器メーカー、電装機器メーカーを対象とするサプライチェーンを調査。その結果を報告書「中国車載電装部品におけるサプライチェーン調査 2016」にまとめた。報告書によると、車載情報通信機器市場では、カーナビ需要は増加が続いている。低価格で多機能であることから、ナビ目的以外に、車内でスマートフォンのコンテンツなどを利用したいと考えるユーザーが車載ディスプレイとして購入していることや、自動車メーカーや車載機器メーカーが近年差別化策としてテレマティクス関連機器・サービスの展開に力を入れ始めていることが要因。今後も市場は拡大が続くとみられ、2016年には837万台の販売が見込まれる。ディスプレイオーディオは低価格と、スマホ用アプリを表示できる機種の需要が世界各地で急速に拡大しているが、中国の需要は伸び悩んでおり、中国情報通信機器メーカーの注力度も低下。その理由は、カーナビが同様の機能を実現できる上に、ディスプレイオーディオとの価格差が小さいため。価格に厳しいユーザーを中心とした需要はあるものの、カーナビなどと差別化が難しいことから、今後も市場は緩やかに縮小すると予想される。部品メーカーの採用動向については、第一汽車、上海汽車、東風汽車などの国営自動車メーカーは、欧米部品メーカーと合弁会社を設立して部品を調達しており、今後も取引関係に大きな変化は生じないと考えられる。一方、吉利汽車、比亜迪などの民営自動車メーカーは、中国ローカル(中国資本のみ)部品メーカーからの調達または自社製品の採用が主流。品質や技術力の向上心は強いため、欧米部品メーカーからの調達を望んでいるが、コストを重視するため、比較的技術力の高い中国ローカル部品メーカーからの調達にシフトするとみられる。また、低コストを実現した日欧米部品メーカーからの調達も増加することから、取引関係の構図は大きく変わっていくとみられる。その他の中小自動車メーカーは、コストを最重要視しており、低価格車販売には安価な部品調達が必須条件であるため、今後も中国ローカル部品メーカーからの調達構造は変わらないとみられる。部品分野別でみると、パワートレイン系部品では、EMS(エンジンマネージメントシステム)や変速制御システムは現在、外資系部品メーカーが市場の多くを占有。中国ローカル部品メーカーでは変速制御システムの開発がまだ見られない。足回り系部品では、1980年代からABSの研究開発が行われており、政府による搭載義務化も進んでいる。中国ローカル部品メーカーはABS以外に、EPB(電動パーキングブレーキ)、ESC(横滑り防止装置)なども展開しているが、採用実績は僅少だ。EPS(電動パワーステアリング)は、品質を重視する外資系部品メーカー製の採用が主流。中国ローカルEPSメーカー製は、合資ブランドの自動車メーカーへの採用は難しい状況にあり、中国ローカル自動車メーカーでの採用が成長の鍵となっている。安全系部品では、現在中国で展開している自動運転システムはほとんどレベル1の段階。ADAS製品を開発する中国ローカル部品メーカーは、カーナビや携帯用カメラに車載カメラなどの技術を融合させ、駐車支援システムなど簡単なADAS機能を実現し、進出している。エアバッグは市場の80%以上を外資系部品メーカーが占めている。ボディ系部品では、中国ローカル部品メーカーのエアコンシステムが一部乗用車やバスといった大型車種、特殊車両などに採用がみられる。欧米で搭載の義務化が進むTPMS(タイヤ空気圧警報システム)は、中国でも重要性が認識され始め、2015年3月から乗用車におけるTPMS搭載の標準化が進んでいる。法律による義務化は進んでいないが、安全性を重視する車種では、自動車メーカーが自主的にTPMSを採用する傾向があり、今後も採用は増加するとみられる。