トヨタ自動車のBEV『bZ4X』が5月に性能アップデートを実施することが、22日明らかになった。ユーザーからの指摘、要望に応えるもので、すでに納車済みの車両、今後生産される車両すべてにソフトウェアアップデートをおこなう。具体的な時期、実施方法については別途案内するとしている。
今回アップデートされるのは次の3点についてだ。
(1)急速充電性能改善
(2)実航続距離改善
(3)メーター表示改善
以下、具体的な対策内容と、ユーザーからの要望を紹介する。
◆(1)急速充電性能改善
1日あたりの急速充電によるフル充電(150kWの急速充電器でSOC10%~80%に充電することと定義)回数がこれまでは2回程度だったのに対し、約2倍の4回程度まで可能となる。さらに、SOC80%以上の急速充電時間を約20~30分短縮する。
トヨタとしては繰り返しの急速充電はバッテリーへの負担となることから、急速充電量やSOC80%以上の急速充電速度を制限し、バッテリーの劣化抑制をねらったが、ユーザーからは、1日あたりの急速充電回数が不十分であること、SOC80%から100%までの充電時間の長さがあげられていた。
bZ4Xの航続距離は日本仕様のFWD車で599kmを実現しており、1日に複数回の急速充電を必要とすることは想像しにくいが、海外、特にアメリカでは1日に1000kmを走ることも珍しくなく、そうしたユーザーから不満の声があがっていたという。
◆(2)実航続距離改善
メーター内の航続可能距離の表示が「0km」になるタイミングを現状よりも遅らせることで、可視化される航続可能距離を増やす。これは実際にカタログ上の航続距離が伸びるわけではなく、これまでは最悪の走行環境を想定しバッファを持たせて少なめに見せていたものを、より現実に即した表示方法に変更したというもの。「表示が0kmになるタイミングが早い」という声がユーザーからあがっていた。
ちなみに航続可能距離が「0km」となっても、即時走行不可となるわけではなく、数km程度は走行が可能とのこと。
◆(3)メーター表示改善
bZ4Xはこれまで、残充電容量を知る手段がガソリン車のメーターのような表示と航続可能距離から推測するしかなかったが、スマートフォンなどと同様にパーセント(%)表示が可能となる。トヨタとしては、ガソリン車同様に一目でわかる表示が最適と考えていたが、ユーザーの使い勝手とは乖離していたようだ。
また表示系ではもうひとつ、エアコン使用時の航続可能距離をより実態に合わせた表示に変更する。これまでbZ4Xは実際のエアコン消費量よりも多く消費する計算で残航続距離を表示していたため、エアコンをオンにすると残航続距離の表示が大幅に減少してしまっていた。BEVを運転すると誰しもが経験する不安要素のひとつであり、これが改善されるのは心理的な負担の減少にもつながるのではないか。
これらの指摘・改善要望は、ユーザーへの負担を最小限にする、安全にbZ4Xを利用して欲しいというトヨタの想いから安全マージンを大きくとった(あるいはとりすぎた)ために生じたもので、ある意味トヨタのクルマづくりに対する真摯さが垣間見えたように思う。今後もユーザーの声や蓄積されたデータをもとに、bZ4Xは進化を続ける。