アメリカの休日風景に欠かせないシーン、ドライブインシアターが、コロナショックで再注目されている。3密を回避できて、リビングとは違う車内という閉ざされた空間で映画を体感できる、古くて新しいエンタメが、いまなぜウケてるか。現場に行ってみると……。ここは千葉・幕張のイオンモール幕張新都心、南平面駐車場。6月13日土曜日の夕方。前日の夏日が嘘のような冷たい雨が降るなか、「CINEMATHEQUE -Drive-in Theater」(シネマティーク ドライブインシアター)会場には続々と巨大スクリーン前にクルマが入ってくる。クルマの種類もいろいろ。家族みんなが乗ったミニバンもあれば、20歳代のクルマ好きとその彼女と思しき女性をのせたガチなスポーツカーもある。SUVを駆る単独女性もいる。日本車のほかに、ドイツ車、イタリア車、北欧車、ナンバーも各地いろいろ。今回のドライブインシアター上映作品は、6月13日が『SING』(監督・脚本:ガース・ジェニングス、出演:マシュー・マコノヒー、トリー・ケリーほか)、6月14日が『Burlesque』(監督:スティーヴン・アンティン、出演:クリスティーナ・アギレラ、シェールほか)。取材に入った現場は、6月13日「SING」の日。“鑑賞権”(クルマ1台にチケット1枚の割当)をゲットしたユーザたちは、19時上映開始の1時間前から会場に続々集結。ひとつのゲートからクルマで入り、誘導員の指示に従って“指定席”にクルマを止める。そのときに「おっ、やっぱり観たいんだ」って思わせるのは、そのクルマをとめる向き。ほぼみんな、スクリーンにむけてクルマの角度を微妙に傾かせて止めている。そして、マイカーの中ってことでもちろん飲食OK。だから、イオンモール幕張新都心やコストコ幕張 倉庫店でドリンクや惣菜をたっぷり買い込んで指定席にクルマをつける人も。その姿が、いつもと違う映画鑑賞シーンという感じで、みんな楽しそう。なかには、「コストコのグリル販売でゲットした」というチキン丸焼きを両手にかかえて笑うカップルもいた。現場でみていると、3密回避や感染防止といった“コロナショックワード”は忘れてしまう。20代カップルをみていると、「クルマの新しい楽しみ方を知っちゃった」という表情だし、コーラやピザをセンターに広げて子どもたちとわいわいやるファミリーをみていると、「あっ、これも新しい光景かも」と思う。さらに、「自分でつくってきた」というサンドイッチをほおばりながら、自前タンブラーを口にしてスクリーンを観る単独女性をみていると、「これもひとつのニューノーマルじゃないか」って、思ってしまう。「ひとりキャンプ」の次は、自分のクルマでそのまま映画、か。そんな雨の土曜日、モール街の駐車場だった。
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