しばしば通る機会のある国道20号線。東京から西に向かい甲府昭和インターを過ぎてしばらくしたところに、ナビに案内が出てきた山口温泉。ふらりと立ち寄る温泉として、試しておくべき名湯と言える。早朝に甲府で湯に入ると言えば町の中心に近い「草津温泉」が定番か。さもなければ少し郊外へ行って、というのが一般的な選択肢だ。しかし、ちょうどラジオが午前9時の時報を告げるころ甲府近くを差し掛かった。早朝というにはやや遅く、かといって、日帰り入浴は10時からという施設が多い中、この9時オープンの山口温泉のそばを通ったのは何かの縁ではないか、と初めて立ち寄った。住所は山梨県甲斐市。その昔、畑の真ん中から温泉が湧き、以来湯治の湯としても親しまれているという。今はすっかり住宅街の真ん中だ。営業開始直後に入るとすでに先客が。常連やファンが多いようだ。「もう30年以上になりますか、毎分100リットルもあれば温泉施設はできるでしょう。うちは沸いたまま毎分686リットル出ています」と番頭さん。「草津温泉がお好き? 熱めで副交感神経を刺激して、朝入ると『今日もがんばるぞ!』っていう気になるでしょうね。それに対してうちのはぬるめですので、ゆっくり入ってもらえますが、本当は寝る前がいいかもしれませんね」水質・効能も大事だが、豊富な湯量は何にも代えられないのではないか。入る者を豊かな気持ちにさせる。山口温泉は920メートルの地下の源泉から直結で自噴する。飲めば糖尿病や通風などにも効果的だという。露天風呂に入ると、もうすぐ収穫の時期を迎える桃の香りだろうか、微かに風に乗ってきた。
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