発売開始から丸1年が経とうとしているClarion『Full Digital Sound』は、サウンドクオリティが高いゆえに、多くのユーザーからの支持を集めている。しかしながら、当システムが人を惹き付けている最大の理由はむしろ、先進性の高さであり、それによって実現できている、省電力・省スペース・省重量・コストパフォーマンスの高さ、これらにある。これらを実現しながらも“音も良い”、このように評価されているように思うのだ。しかし“MST”ではシンプルに、“音”に特化してクルマを煮詰めているという。そこに新鮮さを感じたのである。
果たして、それはどのようなアプローチで取り組まれていて、実際のサウンドはどれほどなのか…。そしてそこのところを確認することで、『Full Digital Sound』の新たな一面が発見できるかもしれない、そう考えて取材班は“MST”へと赴いた。
■発売開始から時間が開いたことで、当初とは異なる意欲が首をもたげた。
“MST”に到着して早々に、同店の代表である小川さんに、Clarion『Full Digital Sound』デモカー『Volkswagen・Golf V』において、「ハイエンドシステムに迫る高音質」をコンセプトに掲げようと考えるに至った理由からお聞きした。
小川「実は、Clarion『Full Digital Sound』のシステムは、発売開始された当初から入荷してありデモカーを製作する予定でいたのですが、車両がなかなか決まらなかったことや、もう1台のデモカー『TOYOTA・クラウンアスリート』に手を掛けていて時間が取れなかったことから、製作に取りかかれていなかったんです。
ちなみに、製品を入荷した当初こそは、これまであまりカーオーディオに関心のなかった層に向けた新たな製品として『Full Digital Sound』に期待をかけていました。話題性と合理性、そしてコストパフォーマンスの高さを前面に出してアピールしようと思っていたんです。
ところでもう1台のデモカーである『クラウンアスリート』には、アナログのハイエンドシステムが搭載してあります。『Full Digital Sound』と比べると、システム総額は約4倍になりますね。
このクルマで昨年1年間、いろいろと実験を重ねました。そしてサウンドコンテストにも持っていって幸いにも良い結果を出すこともできて。なので、ここまでで掴んだノウハウのすべてを、このクルマにも注ぎ込んでみたくなったんですよ。『Full Digital Sound』も、発売から時間が経ち、実力があることが明らかになっていましたし、であるならハイエンドシステムと比べて1/4の費用でどこまでの音が出せるか、そこに取り組んでみようと思ったんです」
最初に感じたのは、“温かみ”だった。『Full Digital Sound』の音は、どちらかというと、ドライでクールな方向に行く傾向があるようにも思うのだが、このクルマでは、アナログサウンドを聴いているかのようなウォームな音が響いていた。情報量が多く、緻密で繊細であるので、その印象が強くなっているのかもしれない。
もちろん、デジタルの良さも十二分に発揮されている。反応の速さやS/Nの高さ、音の輪郭のシャープさなどが『Full Digital Sound』ならではの利点であるが、そういったところがしっかりと導き出されている。しかし、それだけに終わっていないところが、このクルマのいいところだ。能力を引き出すための取り付け上の試みが、いちいち功を奏しているように感じられた。
これまで聴いてきた中で、このクルマが一番だとは言わないが、アナログ的なサウンドであるかどうか、という観点でいうと、トップレベルの完成度にあると言って良さそうだ。『Full Digital Sound』は、突き詰めていくと、アナログ的な音に行き着く、ということなのかもしれない。
小川「『Full Digital Sound』はシステムアップできない、と言われますが、確かにユニットの追加、変更という意味ではそのとおりなのですが、取り付けを煮詰めていく、というアプローチでのシステムアップは可能だと思うんです。最初はコストを抑えてごくごく合理的に取り付けて、段階を経ながら取り付け方を見直していくと、先々まで楽しめると思います。やればやっただけ、応えてくれるんです。そんな楽しみ方も提案していけたらいいなと思っています」
利点を多々持つ、Clarion『Full Digital Sound』。どの利点を重視するかによって、いろいろな楽しみ方ができる。そして、取り付けを煮詰めていくことで、音が良化する感動も都度味わえる。音にこだわった楽しみ方も十二分に可能なシステムなのだ。そのことを、今回の取材でつくづく思い知れた。『Full Digital Sound』は懐が深い…。
これにご興味があれば、クラリオンのHP内にある、『Full Digital Sound Special Contents』のページに飛び、『Full Digital Sound 地域別取扱・販売店リスト』からお近くのお店を探してぜひともご試聴を。体感しておいて損はない。
『Full Digital Sound Special Contents』 http://www.clarion.com/jp/ja/special-contents/fds/index.html
《太田祥三》