三菱電機から、『ダイヤトーン サウンドナビ』のニューモデルが発売された。オーディオ機器としてもナビとしても“ハイエンド”であるとうたわれている当シリーズ。その高いオーディオ性能は、純正スピーカーとのマッチングにおいても発揮されるとのことなのだが…。そこのところを検証すべく、純正ナビから当シリーズのスタンダード機である『NR-MZ200』に交換されただけのデモカー、「スバル・インプレッサ スポーツ」の試聴取材を敢行した。なお、当デモカーには、「ETC2.0車載器」の新機種と、今回新たにオプション設定された「ヘッドアップディスプレイ」も搭載されていた。これらにより、ドライバーはどのようなメリットを享受できるのかについても、リポートしていく。■“良い音”を望みにくい純正スピーカーのままでも、音が良くなる理由とは…。ところで、カーオーディオの音を良くしたいと考えるならば、音の出口であるスピーカーを交換するのが効果的だと言われている。確かにそのとおりだ。なぜならば…。ソースに格納された音楽情報を、いかにロスなく再生できるかが、良い音で聴けるか否かの分かれ道となる。元々の音源の音質を、オーディオ機器で向上させることは基本的には不可能だ。情報の質を落とさず再生できるか、それに向かって試行錯誤するのがオーディオなのだ。その観点に立つと、純正スピーカーは非常に不利だ。クルマは走る道具である以上、オーディオ部品に多くのコストがかけられるべくもなく、さらには昨今の燃費重視の流れから各所が軽量化され、純正スピーカーも華奢な作りとなる傾向にある。オーディオ機器としての性能を望みにくい状況にあるのだ。それを市販品に交換すれば一気に、情報をロスする率を下げることが可能となる。これが、スピーカー交換が有効である理由なのである。ところが…。『ダイヤトーン サウンドナビ』では、純正スピーカーのままであっても音を良くすることが可能となる。ポイントは2点ある。1点目は、音源をアナログ変換する際の情報のロスが非常に少ないこと。通常のナビと比べて、約256倍もの高精細さでアナログ変換を行えるのだ。ここまでの上昇率があれば、純正スピーカーが多くの情報をロスしたとしても、音質の向上幅をある程度キープできる。2点目は、サウンドチューニング能力が通常のナビと比べて圧倒的に高いこと。特に、三菱電機独自の機能、「マルチウェイタイムアライメント」の効果はてきめんだ。これがあれば、純正スピーカーに対しても、ハイエンドカーオーディオで行えるような、厳格なサウンドコントロールが可能となるのだ。クルマの運転席は片側に寄っている。これは、ステレオイメージを正しく得ようと思ったときの、致命的な弊害となる。左右のスピーカーから等距離の場所にリスニングポジションを取ることが、ステレオイメージを感じ取るための大前提であるにもかかわらず、クルマの中ではその基本が丸崩れなのである。しかし、「マルチウェイタイムアライメント」があれば、その弊害を克服できる。■純正スピーカーのままでありながら、サウンドステージが至ってリアル…。かくして、ダイヤトーンデモカーの「スバル・インプレッサ スポーツ」の運転席に乗り込み、『NR-MZ200』で音楽を聴いてみると…。ピアノによるイントロが流れ出し、その後でボーカルが歌い出したところで驚かされた。ピアノよりも前の位置に、ボーカルがすっと現れたのだ。サウンドステージの再現性が、ハイエンドカーオーディオで聴けるようなレベルに迫っている。各楽器の位置関係もイメージできた。通常の純正オーディオでは、スピーカーから音が聴こえてくるが、このクルマでは、目の前にサウンドステージが広がっていて、スピーカーから音が聴こえてくる感じがしないのだ。これはまさしく『ダイヤトーン サウンドナビ』のサウンドチューニング能力の賜物だ。あたかもすべてのスピーカーから等距離の場所にいるような状況が作り出せている。これが「マルチウェイタイムアライメント」の効果なのだ。そして、音色のリアルさ、質感の良さも、純正スピーカーとは思えないレベルだ。音の純度が上がった(ナビ内での情報のロスが相当に少なくなった)ことにより、純正スピーカーのままでも、その効用が発揮できている。さらに言うならば、新型モデルとなったことで、一層音の純度が高められている。サウンドステージのリアルさが、従来機を積んだ同デモカーの音よりも、上がっている印象なのだ。原音の情報をより多く引き出せているので、リアリティが向上しているのだろう。新型『ダイヤトーン サウンドナビ』の音の良さは、想像以上だった。■新たなオプションパーツがもたらす、「安心・安全」のバリュー。なお、同デモカーに搭載されていた、『ダイヤトーン サウンドナビ』のオプションユニット、「ヘッドアップディスプレイ」と、「ETC2.0車載器」についても解説しておきたい。今モデルより、これらを組み合わせて使うことで、「安心・安全」に関する機能を手にすることが可能となる。キモは、「ETC2.0車載器」が“高速化光ビーコン”に対応したこと。この“高速化光ビーコン”の情報を得ることで、“信号情報活用運転支援システム”を運用できる。信号待ちの状態で、青信号に変わるまでの残り時間を知ることができるようになるのだ。新しい『ダイヤトーン サウンドナビ』では、それを画面左下のゲージ内に表示して知らせてくれる。現在、市販カーナビでこの機能を実現できているのは、『ダイヤトーン サウンドナビ』だけだ(国内市販カーナビにおいて。2016年10月現在)。そして、この情報は『ヘッドアップディスプレイ』にも表示可能だ。なお、同ディスプレイは、ダッシュボード上に設置するタイプとなっていて、オーバーヘッドに装着するタイプに比べて視線移動の範囲が狭いのが利点。さらに同機は、最大輝度のスペックが高い。日射しの強い昼間や、西日が強い夕方でも視認性が良好だ。これを使うことで、『ダイヤトーン サウンドナビ』の利便性が拡充する。『ダイヤトーン サウンドナビ』をチョイスする際には、これらのオプション機器の導入も検討したいところだ。ナビの“ハイエンド”性が、さらなる高みに達するのである。さて。ますます音が良くなった今年の『ダイヤトーン サウンドナビ』。これを用いることで、愛車のオーディオ環境がぐっと向上する。音が良くなるとドライブの快適性もぐっと高まる。音楽好きのドライバーは、『ダイヤトーン サウンドナビ』に、要注目だ。