『プリウスPHV』のプロトタイプ車に試乗した。従来のPHVはいかにもプリウスの派生車という感じで特徴に欠ける部分があったため、今回はプリウスとの違いをデザインでも走りでも明確化してきた。外観デザインはボディの基本はプリウスながら、PHVは前後のデザインを大きく変更した。フロント回りはLEDヘッドライトの採用など、『ミライ』にも通じる部分のあるデザインとし、リヤはテールランプのデザインを縦から横へと大きく変更し、全く違うクルマのような印象を与えている。リヤのハッチゲートは炭素繊維強化樹脂製とされ、ウインドーはふたつの盛り上がりがあって大きく波打ったように見えるダブルバブルウインドーとしている。ボディの軽量化のために採用された樹脂製のゲートだが、これが原因で発売遅延につながったとも言われている。インテリアはインスト中央に縦型に配置された11.6インチの液晶パネルが注目される。ディスプレーの縦配置はトヨタ車として初で、液晶自体もフルHDの高精細なものとされている。カーナビ以外にもいろいろな操作が可能だが、少なくともカーナビは進路の先が見えるので縦型の方が使いやすい。発進はEVモードで走り出す。とても静かでスムーズな走りだ。今回のモデルではジェネレーターもモーターとして走行に使うデュアルモータードライブを実現したので、標準のプリウスと比べて格段に力強い走りが可能である。試乗は袖ヶ浦フォレストレースウェイのコースで、プリウスとプリウスPHVを乗り比べたが、走りのフィールは静かさや力強さなどの点で、全く別のクルマではないかと思うくらいに異なっていた。『ゴルフGTE』のGTEモードほどではないが、エコとパワーとノーマルの各モードはそれなりにメリハリが利いていて、走りのフィールには確かな違いがあった。新型プリウスPHVでは、8.8kWhのリチウムイオン電池を搭載することで、60km以上のEV走行距離を確保するとともに、EV走行での最高速は135km/hに達するという。私の腕では袖ヶ浦の最終コーナーから1コーナー手前までの直線で123km/hまでしか出せなかったが、その時点でまだ伸びていく感覚があった。EV走行とハイブリッド走行はボタンで選択でき、選択ボタンを長押しするとチャージモードになる。高速道路を移動中にチャージモードにして電気を蓄え、出かけた先で静かな環境の中でEV走行に徹することなども可能だ。また従来のプリウスPHVは電気を使い切ると、改めて充電しないEVモードに戻れなかったが、今回のプリウスPHVではチャージモードなどで電気を蓄えれば再びEVとして走れる。もうひとつソーラー充電システムが見逃せない。ルーフに配置した太陽光パネルで発電し、これを駆動用、あるいは補器類やシステムなどを動かすための電気として使うものだ。晴天なら1日で最大6.1km走行分、平均でも2.9km走行分の電気を蓄えられるという。サンデードライバーなどなら、ソーラー充電でかなりの走行をカバーできることになる。ただし、これは一部グレードにオプション設定で、未発表のオプション価格は電気代に見合う水準にはならないらしい。環境性能を意識して選ぶ装備だ。今回のモデルではほかに、急速充電に対応したほか、家庭用の100V/6A充電も可能にして利便性を高めている。100V/6Aでフル充電しようとすると14時間もかかるのだが、家庭のコンセントから普通に充電できるのはとても良い。新型プリウスPHVの欠点となるのは、クルマの後部に搭載される駆動用バッテリーによって、ラゲッジスペースの床面が7センチほど高くなっていること。荷物は余り積めないな、という印象だ。発売は12月に延期され、価格もまだ発表されていないが、クルマとしての完成度は高く、最近増えている欧州のPHEV車にも十分に対抗し得るクルマだと思う。■5つ星評価パッケージング:★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
寒風吹きすさぶ自動車各社、日産は北米の従業員6%が希望退職、フォードは欧州で4000人削減[新聞ウォッチ] 2024.11.22 Fri 13:48 寒さが身に染みる季節の師走もまじかに迫っているが、世界の自…