カーオーディオユニットの取り付けにまつわるあれこれをご紹介している当コーナー。現在は「パワーアンプ」のセッティングについて掘り下げている。今週は先週に引き続き、パワーアンプに搭載されている「クロスオーバー機能」の賢い使い方をご紹介していく。前回は、「パワーアンプ」に搭載されている「クロスオーバー機能」を使って、ドアのスピーカーの音をすっきりさせる方法を取り上げた。今回は、フロント2ウェイスピーカーを“マルチアンプ駆動”させる使い方を解説していく。これを実行するためには、パワーアンプが以下のようなタイプでないとならない。4chモデルであり、搭載されているクロスオーバーが、“ハイパス”と“ローパス”の両方に対応していて、しかも、クロスオーバー周波数の選択可能範囲が、50Hzあたりから5kHzくらいまでというように幅広い、というようなタイプだ。そして、そのようなタイプであることを活用して、以下のようにセッティングする。まずはパワーアンプのフロントch出力を、左右のトゥイーターに直接配線する。そしてリアchの出力を左右のミッドウーファーに直接配線する。その上で、フロントchの「クロスオーバー」を“ハイパス(ローカット)”に設定し、クロスオーバー周波数を仮に4kHzにセットする。つまり、トゥイーターには4kHzより上側の信号だけを送るような状態とするのだ。続いて、リアchの「クロスオーバー機能」を“ローパス(ハイカット)”に設定し、クロスオーバー周波数を4kHzにセットする。ミッドウーファーには、4kHzよりも下の信号だけを送るような状態としたわけだ。これで完了だ。これで、パワーアンプの1chずつで1つのスピーカーユニットを駆動する、“マルチアンプシステム”が完成したわけである。ちなみに現代のハイエンド・カーオーディオでは、“デジタル・シグナル・プロセッサー(DSP)”でクロスオーバーをかけて“マルチアンプシステム”を構築する、というスタイルが主流となっている。こうすることで、“タイムアライメント”の設定を、スピーカーユニットの1つ1つに別個に掛けられるようになるからである。それに対して、パワーアンプ内で“クロスオーバー”をかけて構築する“マルチアンプシステム”では、「タイムアライメント」は関係ない。パワーアンプには同機能が搭載されていないからだ。ならばこのシステムには旨味がないのでは…、と、思ってはいけない。「タイムアライメント」はかけられずとも、“マルチアンプシステム”の利得はしっかり享受することができる。それは、1つのスピーカーユニットを、パワーアンプの1chを使ってパワフルに、かつ余裕を持ってドライブできる、という利得である。この利得による音の変化幅は、実は結構大きい。音の質感が確実にワングレード向上する。“マルチアンプシステム”ならではの旨味は、しっかりと得られるのである。もしも4chアンプを使っていて“DSP”を未導入という方は、まずはシステムレイアウトを変更して、4chアンプでフロント2ウェイを“マルチアンプ駆動”させるこのシステムを試してみてはいかがだろうか。同じスピーカーを使っていながらも、性能がワンランクアップするという感動を味わえる。お薦めだ。さて、今回はここまでとさせていただく。次回も「パワーアンプ」に搭載されている「クロスオーバー機能」について深堀していく。お楽しみに。