東レは、独自開発「高遮熱フィルム」の純正ガラス採用を目指す…フィルム事業本部 担当者に聞く | CAR CARE PLUS

東レは、独自開発「高遮熱フィルム」の純正ガラス採用を目指す…フィルム事業本部 担当者に聞く

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東レは、独自開発「高遮熱フィルム」の純正ガラス採用を目指す…フィルム事業本部 担当者に聞く
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8月後半になっても、まだまだドライブ中の日差しは強い。

ジリジリ感を抑える暑さ対策として、遮熱やUVカット効果があるとされるフィルムを、フロントガラスや前方ガラス(フロントドア、フロントコーナーなど)に貼り付けるカーフィルム施工は、毎年夏前から注目トピックとして話題に挙がるが、重要な注意点がある。

道路運送車両法の第三章 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第117条第4項第6号の中に「装着され、貼り付けられ、又は塗装された状態において、透明であるもの。この場合において、運転者が交通状況を確認するために必要な視野の範囲に係る部分にあっては可視光線透過率が70%以上であることが確保できるもの」と義務付けられているため、車検時にNGになるかもしれない不安感から施工を諦めるカーオーナーも少なくない。

そのような背景がある中で、東レ株式会社は、独自のナノ積層技術を深化させて開発した「次世代モビリティ向け高遮熱フィルム」の量産技術を確立したことを2023年6月末に発表。電気自動車(EV)などのフロントガラスやサンルーフへの適用を目指しているという。

次世代モビリティ向け高遮熱フィルムとは、どういったものなのか。フィルムの特徴や今後の展望などについて、東レ株式会社 フィルム事業本部の田島宏一氏(ディスプレイ材料事業部門 光学機能材料事業部長)と蒲谷嘉一氏(光学機能材料事業部 NVC-G主任部員)に詳しい話を聞いた。

PETフィルム生産、国内最大手の世界的な化学メーカー「東レ」

まずはじめに、東レ株式会社について紹介したい。同社は1926年(昭和元年)にレーヨン糸の生産会社として「東洋レーヨン」の社名でスタート。ナイロン、ポリエステル、アクリルの合成繊維に加え、フィルム、ケミカル、樹脂、さらには電子情報材料、炭素繊維複合材料、医薬・医療、水処理・環境といった様々な分野で革新的な技術を開発し、多くの先端材料や高付加価値製品を創出し続けている。

同社のフィルム事業として最も注目すべきトピックは、今から64年前の1959年に日本で初めて二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム『ルミラー』の工業生産化を実現した点だ。当時、PETフィルムの主な用途は食品包装やラベルだったが、その後、磁気テープの記録媒体として爆発的に普及したVHSやカセットテープの “ベースフィルム”に東レ製PETフィルムが採用されたことで、海外にも生産拠点を設けてグローバルでシェアを拡大していく。

CDやDVDの登場で磁気テープ市場は衰退したが、東レは、磁気テープのベースフィルム開発時に生み出した加工・生産技術を進化させ、フィルムの厚みが薄いのに巻き上げやすく、高い透明性もある三層構造のPETフィルムを創出。電子部品やIT光学関連、液晶テレビ、PCモニター、携帯電話、スマートフォン、タッチパネルなどのディスプレイ材料素材として、東レ製PETフィルムは全世界で活用されており、2023年8月現在では日本・韓国・中国・マレーシア・アメリカ・フランスの世界6カ国に生産拠点を設けている。

カーフィルムの “ ベースフィルム ” 世界シェア約70%

東レ製PETフィルムは、現在普及するカーフィルムや建築窓用ガラスフィルムの “ ベースフィルム ” としても広く採用されており、なんと世界シェアの約70%を占めるという。世界6カ国にある東レの生産拠点では、ウインドウフィルム用のトータル生産重量が月千トン近くあり、このうち多くはアメリカの拠点で生産。主な供給先は、EASTMAN社(LLumar、V-KOOL)、Saint-Gobainグループ(SolarGard)などほぼすべてのフィルム加工メーカーであり、各メーカーは東レ製ベースフィルムを加工・パッケージングし、全世界に販売展開しているという。

「次世代モビリティ向け高遮熱フィルム」の特徴

カーフィルムの “ ベースフィルム ” として圧倒的なシェアを誇る東レが作り出した「次世代モビリティ向け高遮熱フィルム」は、2008年から販売するナノ積層フィルム『PICASUS®(ピカサス)』がベースになっており、約1,000層が積層されたフィルムの各層の厚みを、1ナノメートル単位で管理・制御する独自技術をさらに “ 深化 ” させ、従来技術では困難だった高い透明性と遮熱性能の両立を実現したという。

もう一点、重要な特徴として、高い電波透過性がある。遮熱性能を高めるために熱を通さない金属膜(金属スパッタフィルム)を使用すると電波透過性が下がるため、東レでは金属膜を使わずに高い電磁波透過性能の実現にいたったという。

フィルム事業本部の田島氏は「ガラス並みの透明性と、太陽からの赤外線に対するハイレベルな遮熱性、次世代モビリティで重要となる自動運転に欠かせない、5G通信電波にも対応できます」と話す。

実際に、東レ製の次世代モビリティ向け高遮熱フィルムを、EVのフロントガラスに実装した結果、最大で夏場の走行時の冷暖房消費電力を約3割削減でき、航続距離が約6%向上。加えて、通常の遮熱ウィンドウフィルムでは不快感を覚える夏場環境条件でもマイナス2度の体感温度抑制を示し、搭乗者の快適性向上を確認済みとのこと。

ADAS搭載車「樹脂パーツ加飾部材」として採用

フィルム事業本部の蒲谷氏は「ナノ単位で各層の厚みを管理できるため、光波長をコントロールすることで、金属を使っていないのに光透過性を確保しながらメタリックな色合いを表現できます。そのフィルムの裏側に印刷を施すことで、完全なるメタル調を実現可能です。このため、メタル調のフィルムを貼った樹脂パーツのエンブレムの後ろに、ADAS機能用のミリ波レーダーを設置しても問題なく、電波を透過します」と話していた。

電磁波透過性能の高さが評価され、すでに一部の自動車メーカーでは、ADAS搭載車の樹脂製エンブレムパーツ加飾部材として採用されているという。

メーカー純正採用を目指す

遮熱性・電波透過性・透明性に優れる「次世代モビリティ向け高遮熱フィルム」の量産技術を確立した東レは、2025年から自社の岐阜工場で量産開始を目指している。2030年ごろには数十億円規模の売上に成長させ、EV市場の拡大とともに、将来的には100億円規模に伸ばしたい考えで取り組んでいる。

フィルム事業本部の田島氏は「アフターパーツとして、フロントガラスへの貼り付け施工用フィルムとして提供する方法もありますが、自動車メーカー純正のフロントガラスやウィンドウガラス、サンルーフガラスの中間膜としての採用をメインターゲットとして提案を行っています」とコメント。合わせガラスに挿入できるサンプルフィルムを用意し、すでに国内外の自動車メーカーやガラスメーカーと協議を行っていることを教えてくれた。

最近では、自動車メーカーが発行する修理書にADASへの影響を考慮して「フロントウインドウガラスにはフィルムを貼らない」という記載もある車種も出てきた。このような車種にはウインドウフィルムを貼ることが難しいが、快適なドライブを実現するためのウインドウの遮熱機能の有用性を拡げるためにも今回取材した次世代モビリティ向け高遮熱フィルムに代表される高機能フィルムの自動車メーカーにおける採用を期待したい。

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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